屋根の骨組は「小屋組」といいます。“小屋”とは屋根と天井の間のことを指し、 合掌造りの小屋組は三角形を組み合わせた叉首(トラス)構造(※1)で、変形に強く丈夫です。
また、小屋組にはクギなどの金属は一切使われておらず、植物のみでできています。
※1叉首構造:屋根の2本の斜材(叉首)を棟(屋根の一番高いところ)で交差させ、梁の両端に差し込んだ構造。
植物だけで作られた合掌造りの屋根が、丈夫で長持ちする秘密を4つ紹介します。
1、茅葺き
合掌造りは、材料に植物を利用した「茅葺き」屋根です。
白川村の合掌造りにはおもに「大ガヤ(ススキ)」と「小ガヤ(カリヤス)」が使われています。
今ではカリヤスが手に入りにくくなり、ススキで葺かれることが多いです。
大ガヤ(ススキ) |
イネ科の植物。 |
小ガヤ(カリヤス) |
イネ科の植物でススキの仲間。 茎はストローのように穴があいています。 通気性がよく乾燥しやすいこともあって、ススキよりも長く50年ほど利用できます。 |
2、駒尻
屋根を支える太い梁の一番下は鉛筆のようにけずってあります。これを「駒尻」といいます。
雪や地震・強風などで屋根の上の方がゆれたり傾いたりしても、コマの軸の先端のように、その力や重みはこのとがった駒尻の部分にのみ伝わり、家が壊れにくくなっています。 梁が受けた力は、そこからその下の柱を通って地面に伝わっていきます。
3、ハガイ・ヤナカ・クダリ
屋根にななめに入っている柱は「ハガイ」と呼ばれ、一般的な日本家屋の「筋交い」にあたります。ななめに柱を入れることで揺れに強くなります。
横木は「ヤナカ」、垂木(縦木)は「クダリ」といわれ、格子のように組まれています。このように組まれることで、たとえ1か所折れたとしても一気に屋根が壊れてしまうことはありません。
それらの柱を「ワラ」や「ネソ」と呼ばれるつる植物で結び付けています。
「ネソ」とはマンサクという木の若木で、乾くとしっかり締まるという特徴があります。
このように植物を結び付ける固定の方法により、柔軟で壊れにくい構造となります。
4、天井(部屋の上部に張った板、屋根裏の床部分)
屋根裏の床は、空気が通るようにすき間をあけたスノコ状になっており、住居部分にあるイロリの煙を屋根裏に回しています。イロリの熱によって屋根を乾燥させたり、イロリの煙でいぶすことで防虫効果があります。
また、イロリの“スス”によってソネなどの結び目が締まってより頑丈になり、茅葺きがより長持ちします。